フランスのパン屋さんだと思っていたら、ベルギー人が経営しているパン屋さんだった。
ここは、支払いは経営している家族、その下で働いているのが、モロッコ人。
学校へ行く前に、カフェをしながら勉強でもしようかと思い、早めにホテルを出た。
新市街の方がお洒落で、おいしいカフェが飲めるので、ちょっと値が張るが、気持ちの切り替えも兼ねて出かけた。
思いついたのは、以前に食べておいしかったケーキのお店だ。
内装や洗練された味から、フランスのお店だと思っていたら、オーナーはベルギーの方だった。
私が飲み物を頼んで、お店をじっくり見ていたら、お客だと思っていた紳士風のおじさまが、オーナーだった。
流暢な英語ではあるが、洋服がなんとなくヨーロッパぽかったので、フランス語で聞いてみた。
そうしたら、ベルギー出身の方だった。
それからいろんな話をし始め、話題は多岐に渡った。
どうもいろんな国に住んでは、現地の言葉を覚えるのだという。
日本語にも興味があったのか、ちょっと教えてあげた。
でも、3つのキャラクターをミックスさせて日本語として使っているからと説明したら、驚いてました。
確かによく考えたら、平仮名 カタカナ 漢字を使うのって、なんだかとても不思議な感じがした。
でも、漢字があるからこそ、いろんな表現が出来て、文章に深みが出るのだと思う。
だから日本語は、文化の発達してた日本だったからこそ、発展したんだと思う。
言語を習得するという事は、文化や歴史も学ぶ事だと私は思っている。
そのベルギーの紳士を観察してたが、お金を持っている余裕からくるものなのか、新市街には珍しい貧しそうな少年が店の前をうろうろしてた。
紳士は、お店からパンを取り出し、袋に入れて与えた。
そこには、売り物と同じように気遣う心があった。
余裕があり、人を気遣う思いやりがある。そして世界を語る。
紳士にとって、他国の言語を学ぶという事は、相手国の人々を知るには大切な事だと言ってた。
私にケーキをご馳走してくれた。
そこには、打算も何もない。一人のゲストとして私を扱い、その心遣いがさりげないのだ。
久しぶりに見る本物の紳士だ。
そして、外に座り、外をゆっくりと眺めている。
人生の大切な事を知り、今の生活に満足しているようだった。
しかもその話には芸術の話は出てはこなかったが、紳士が芸術をこよなく愛しているように思えた。
一人の青年が現れた。
紳士の息子だと言う。
息子さんを見て、やっぱりこの親あってこの子ありだなーって紳士は本物だった。
二階の奥から猫の親子が、野良なのか飼い猫なのかは分からないが、時折、顔を覗かせている。
猫はのんびりとしている。野良猫が勝手に住み着いてそれをよしとしているのかなー。
なんだかいいなー。
このお店はいい空気が流れている。
味もそうだが、客層もいいし、店のレイアウトもいい。
私はここで、生ハムとパンを持ち帰る事にした。
お気に入りのケーキは早くも無くなってしまったのは残念だった。
紳士は私にこう告げた。
フランス語が上達したいのなら、この店に来ればいい。
そうだなー。それもいいかもと思った。
とろけそうな生ハムと絶品のケーキにもありつけたいし。
品格と博学を持ち合わせた紳士に出会うと、どんな高級な物なんかよりもすごい事のように思えた。
淑女を目指そうかな。
そう思わせてくれた出会いに感謝です。
ちょっとうれしい一日でした。
ショコラン!